最近加入したDisney+で映画『フリー・ガイ』を見た。
あらすじ
ルール無用のオンライン参加型アクションゲーム「フリー・シティ」。銀行の窓口係として強盗に襲われる毎日を繰り返していたガイは、謎の女性モロトフ・ガールとの出会いをきっかけに、退屈な日常に疑問を抱きはじめる。ついに強盗に反撃した彼は、この世界はビデオゲームの中で、自分はそのモブキャラだと気づく。新しい自分に生まれ変わることを決意したガイは、ゲーム内のプログラムや設定を無視して勝手に平和を守り始める。
レビュー
面白かった。王道なアクション・王道な展開だったがライアン・レイノルズ節がさく裂していた素晴らしい映画。だが一方で抜けがあるようにも思える映画だった。
「フリー・シティ」は銀行強盗や殺人が日常茶飯事で行われているオンラインゲーム。ちなみに「レディ・プレイヤー1」とは違いVRゲームを舞台にしたゲームではないため、「グランド・セフト・オート」に近いようなゲームだと思って構わない。
主人公ガイは銀行員NPC。金魚を愛でてお決まりの青いシャツを着て出勤。銀行強盗が来たら伏せて、彼らが去るまで警備員の親友、バディと一緒に彼女が欲しいという話をする日々。お決まりのセリフは「いい一日ではなく、素晴らしい一日にしよう」。
そんな彼がある日、プレイヤーのモロトフ・ガールという女性に一目ぼれしたことで物語は始まる。
後々の展開でモロトフ・ガールに恋したことで彼の自我が目覚め、ゲーム最初の人工生命になったといわれているが個人的には彼女が欲しいと思っている時点でだいぶシンギュラリティを突破していると思う。だから会話相手のバディもシンギュラリティ突破していると僕は見ている。
こういう考察を生み出さないためにも、最初のガイの日常はNPCという設定を徹底した方がよかったと思った。心情描写要らず、ただただ話しかけられても「いい一日ではなく、素晴らしい一日にしよう」というだけの日常パートで良いのではないかというのがこの部分に対する僕の意見である。モロトフに恋したところで初めて感情があることを知って…という感じの方が筋が通っていると思う。
NPCは訊かれたことに対して10も満たない程度の返答しかできない。それを制作陣は念頭においたうえで製作してほしかった。
モロトフを追うなかで彼はプレイヤーの象徴であるサングラスを奪い、プレイヤーとしてモロトフと同じところに立てるようにレベル上げを行っていく。
ここら辺のパートはMCU作品にありがちな音楽にのせながら成長をハイテンポで描いている「あれ」。凄くよかった。成長だけでなくそこにライアン・レイノルズならではの面白さを組み込んでいたから楽しんでみることができた。
そしてモロトフと同じところに立ったところで話は本題へ移る。
モロトフはゲーム開発者で実は「フリー・シティ」の原型を作っていたのだ。しかしそれを大手ゲーム会社社長、アントワンに盗用されていて現在訴訟を起こしていた。そしてその盗用の証拠が「フリー・シティ」にあるらしい。
アントワンは「フリー・シティ」の続編を発売しようとしている。もし続編のサービスが始まれば「フリー・シティ」の全データが書き換えられ、NPCは全員いなくなる。そうなれば盗用の証拠もなくなる。
モロトフはガイに「この世界はゲームなの!」と説明して全データが消されないためにも盗用の証拠を得る協力をしてほしいと頼む。
だがこの世界を偽りの世界だと思っていなかったガイは大ショック。
ここら辺はちょっと遅いマトリックスという感じかな。でもマトリックスのネオよりも凹んでいた。
目に見えている光景は実は偽物で同じレスポンスしかしてこない人間。それに気づき始めたら何したって無意味に感じてくる。
でも親友バディはこう答える。
俺がリアルじゃなくてもこの瞬間はリアルだ。今俺は親友を助けようとしている。これがリアルじゃなかったら俺にはわからない。
ここ、すごくよかった。例え世界が偽りでも(リアルじゃなくても)今直面している事実は本当(リアル)だ。「世界が偽りだから」ということは目を背ける理由にはならないといいたいのだろう。
ここのパートはなかなかに感動した。落ち込んだ主人公を登場人物が励ますシーンは割と回りくどいことがあってたまに退屈するのだがこれはわかりやすく、それでいて心動かされた。
そのあとはガイが盗用の証拠をとりにいく展開。
アントワンはそんなガイを倒そうと最強キャラ、デュードを投入させる。
このデュードからの攻撃の防ぐためにでてきたアイテムこそ、キャプテン・アメリカの盾。
いやホントにここ驚いた。そのあとアベンジャーズのbgm流れてきて挙句の果てにはキャプテンが画面見て「俺の盾じゃん」と言う始末。
あのキャプテン、髭があったから『インフィニティ・ウォー』ちょい前なのだろうか。
ここまでやっちゃって大丈夫なのか?冒頭にMARVELのロゴぶちこんだ方がいいんじゃないのか?と思うくらい羽目を外しているのが凄くよかった。
デュードを倒したあとは崩れ落ちる地面から必死に逃げる王道なアクション。バディの退場シーンのときは地面崩れ落ちなかったのは不自然だなあとは思った。割と喋ってたしな。一言で収めてほしかった。
そして盗用の証拠を見つけ、アントワンは失脚。モロトフの中の人、ミリーは共同開発者のキーズとキーズの友達のマウサーと共に自分たちで続編「フリー・シティ2」のサービスを運営していく。でもミリーはガイに惚れているため会いに行く。
でもガイは自分はラブレターという。
どうやらガイはキーズが作ったキャラであり、理想の女性にミリーの特徴を設定していたのだ。
それを知ったミリーはキーズに会いに行き、ガイもバディと再会して物語は終わる。
ここ、ぶっ飛びすぎ。
そもそもNPCに理想の女性を設定するのだろうか。プレイヤーはボイスが基本らしいからどんな答えが来ても対応できるように設定したのだろうか。
じゃあカップラーメンのなかで好きなやつは何かとかでも返答できるのだろうか。僕はマルちゃん正麺のカップラーメンなんだけど、君はどう?みたいな。キノコの山とタケノコの里、どっちが好きとかも設定しているのだろうか。
流石にモブキャラ一体にそこまで設定してはいないだろう。していたら本当にもの好きである。
でも理想の女性をモブキャラに設定する意味はないなと思った。キーズはキャラクターに自分を重ね合わせる前にミリーにアプローチしろよ。
一目惚れしたガイが不幸で仕方ない。バディと再会してハッピーエンドっぽいがそこはちゃんと報われてほしかった。
総評
王道な展開の感動映画だったがNPCの設定やラストが都合よく感じられてしまった。
結局この結末にもっていくために後付けしたんだなと思われても仕方ない設定だった。
だが『デッドプール』のライアン・レイノルズが主演っていうのもあってか商標ひっぱりまくりの作品になっているのがよかった。
ライアン・レイノルズにはこれからもハチャメチャな作風の、第四の壁なんて小指で壊す勢いの作品をやっていってもらいたいと思った。
ちなみにマルちゃん正麺のカップラーメンはこれ。量は少ないのだが、味が凄く良くて好き。なかでも味噌味をオススメしておく。