【映画】クロニクル

Disney+で『クロニクル』を見た。そのレビューをしたいと思う。

 

 

あらすじ

超能力を手にした、高校生のアンドリュー(デイン・デハーン)、マット(アレックス・ラッセル)、スティーヴ(マイケル・B・ジョーダン)は、自分たちの姿をビデオで記録することに。超能力を使い、他人がかんでいるガムを口から取り出したり、女子のスカートをめくったり、空中でアメフトをしたりと、退屈だった毎日を刺激的なものに変える三人。そんなある日、クラクションを鳴らして後方からあおってきた車を、アンドリューが超能力でスリップさせる。それを機に、彼は超能力を乱用するようになり……。

引用元:クロニクル の映画情報 - Yahoo!映画

 

レビュー

面白くなかった。演出が不明瞭で作品に一貫性がない映画だった。

 

冒頭、鏡に映った主人公アンドリューが買ったカメラを調整しているところから始まる。

「これから僕は生活の全部を撮影しようと思う」そう意気込むのですが純粋に思ってしまう。

 

何の為に?

 

物事を行うのには理由が必要なのだ。特に「カメラで生活を撮る」なんていうことを行うのはそれなりの理由がないといけない。

これで理由がなかったらやべえ奴なのだ。後にこいつ、友達の葬式も撮影するし。手癖が悪すぎて最早精神科行った方が良いレベル。

で、このアンドリューが生活を撮り始めるようになった理由は「ない」。

うん。手癖が悪すぎる。

レンズに映っている人間たちは「誰が見るの?」とか訊く。アンドリューは「何百万人もの人が見る」と答える。

 

ユーチューバー?とか思ったのだがそういった描写は一切ない。何かしらのタイミングで区切りをつけて動画投稿するのかな?なんて思うが人の生活を見て誰が喜ぶのだろうか。

酒に溺れ、息子にあたりちらす父親と病気の母。笑いものにならないでしょ。

そしてレンズに映ったやつらは「何のために?」と訊いてほしかった。おかげさまで作品を通してカメラの意味が理解できなかった。

おそらくカメラは起こった出来事をリアリスティックに映すためのツールだったんだと思う。

それが分かるのが物語の中盤。

石窟の奇妙な石に触れたアンドリューと友達のマットとスティーヴは宿った超能力を乱用していく。

人の買い物カートを動かしたり、子供にぬいぐるみを浮かせて脅かしたり。お前らマジで迷惑系ユーチューバーじゃん…と思う描写が続くのだがそんなある日、クラクションを鳴らしてくる五月蠅い後ろの車を念力で故障させて川に落としてしまう。

そこら辺の下りはやっぱり映画に使われるカメラには為せない質感でとてもよかった。超能力を使っている非日常だが非日常と思えない、そんな描写が個人的には良かった。

だからこそ撮り始める、撮り続けるアンドリューの意味が欲しかった。

そしてマットの彼女の女の子がカメラを回すのもよくわからない。

彼女さんはどうやらブログをやっているらしくてそれで必要なんだとか。

よかった。アンドリューよりかはほんの少しだけど良く描かれている。

でもマットが家に来た時もカメラまわすのはブログ関係ないでしょう。最早行動が独り歩きして理由を置いてきぼりにしている。

それがあったから終始はてな状態であった。

そしてカメラも後半から現実味を帯びなくなるところも残念なところ。

念動力でカメラを動かしてしまうから人間がやるカメラのぶれというものがまるでない。

カメラをもって自撮りみたいな感じで「いえ~い!みんな見てる~?」みたいなことを言いながら話を進めてほしかった。

これは皆が同じ超能力をもっているということが原因だがみんな能力を別にして、そしてそれらの能力はカメラを持ち上げるとかいうものにしてほしくなかった。

 

そして終盤。能力の副作用や複雑な家庭環境の末、アンドリューは暴走する。スティーヴ亡き今、止められるのは自分しかいないと思ったマットはアンドリューと公衆の面前で超能力バトルを開始する。

ここ、人々の端末のカメラや監視カメラを駆使して闘いを描写しているところはよかった。

だがこれを続けられない。挙句の果てにはカメラ抜きに映画のカメラワークを普通にしてしまっている。

最早呆れしかない。目的不十分のままでてきたカメラだったのだが、それならばせめて最後まで貫いてほしかった。それこそ他人の媒体やら使って。

 

演出ばかり言ったのだが物語としても楽しめる要素はあまりなかった。「思春期の青年たちが超能力をもったら?」という話故に結構リアルに描かれているのだが、本当にそれだけ。別段政府と戦うわけでもないし、彼ら以外の超能力者と闘うわけでもない。

なにかそこに一つ要素があればよかったなと思った。非常に物足りなさを感じた。

ただ、本当にリアルではあった。スティーヴとマットは「なんか変な石窟あるからいこうぜ!」みたいな形で一緒になって超能力を持ち帰ってからというもの、ずっと遊んでいる。「俺たちずっ友!」みたいなことも言っている。

でもアンドリューはその友情に違和感を覚える。

 

え、超能力があるからつるんでいるだけだろ?

 

言い換えれば「もし石窟探検で何も起こらなかったらこの先何もなかったんでしょ?」みたいな。そんなことをアンドリューはスティーヴやマットに口走る。

確かに。スティーヴなんて石窟いこうぜ!っていう前完全に話していなかった。マットとは一緒にいたからこそ最後までもっていくに相応しかったけどそういう心理的な面も個人的にはよく描けているなと思った。

 

総評

とはいえ、この映画はあまり面白くなかった。演出設定、キャラクター設定にかなりの欠陥があるため、作品を通して腹が立った。

1時間30分と短い映画ではあったが満足感のない映画であった。まだアニメ映画見た方が良いくらいに。

だが超能力を持った男子たちの心情はしっかり描かれていた。自分もこうなるのかなと思った。

他人の買い物カートを念力で動かすのは「やらないだろ」と思うのだが見終わった今、やってしまうなとも思う。日常で実践したくなるのは分かるから。

まあ超能力をもったら僕は日本政府に名乗り出て協力と見返りに家族や自分へ多額の資金援助をしてもらおうかな。

自身の才能は自身でよく理解し、他者のことを考えたうえで使うべし。

それが伝わる映画であった。