【映画】スイス・アーミー・マン

Amazonプライムビデオでスイス・アーミー・マンを見た。

 

 

あらすじ

無人島で助けを求める孤独な青年ハンク(ポール・ダノ)。いくら待てども助けが来ず、絶望の淵で自ら命を絶とうとしたまさにその時、波打ち際に男の死体(ダニエル・ラドクリフ)が流れ着く。ハンクは、その死体からガスが出ており、浮力を持っていることに気付く。まさかと思ったが、その力は次第に強まり、死体が勢いよく沖へと動きだす。ハンクは意を決し、その死体にまたがるとジェットスキーのように発進!様々な便利機能を持つ死体の名前はメニー。苦境の中、死んだような人生を送ってきたハンクに対し、メニーは自分の記憶を失くし、生きる喜びを知らない。「生きること」に欠けた者同士、力を合わせることを約束する。果たして2人は無事に、大切な人がいる故郷に帰ることができるのか──!?

(Amazonより抜粋)

 

レビュー

微妙であった。だいぶ笑わされたが一方で観る側の理解を置いてきぼりにする、ヘンテコ映画であった。

 

俳優とかあらすじで言われてもピンとこない人に言うとこの映画はザ・バットマンリドラーが死体になったハリー・ポッターを使い無人島脱出を試みる映画」である。

この映画の噂はかねがね聞いている。ダニエル・ラドクリフが『ハリー・ポッター』で得た収益を親に徹底管理してもらったお陰で出たい役に出れることができたらしく、それで本作品の死体役もゲットできたとか。

にしても、役もう少し考えない?とツッコみしたくなるが、本人が決めたのなら何も言わない。現に演技の方でも「他の俳優の方がよかったよ~」などとは思わなかったからね。

 

本作品は結構導入が早い。冒頭、主人公の漂流者ハンクが首を吊ろうとするのだが、そこにダニエル演じるメニーが漂流してくるから5分ぐらいで導入にいった気がする。

そしてそのメニーが死体のクセにおならをこきまくっている。

もうこの時点で面白い。ぶっとんでいるなとは思ったがのちのち調べると死体は体内にガスを発生させ、死後10日以上を過ぎると体内に充満したガスや水分などが体外に噴出するからあながちぶっとんではいない。それがきまって尻の穴から出るのはさておき。

だがこの死体、そのあとがもう科学的に証明できないほどにイカれている。

 

まず水が出る。雨水が肌に充分滴ったことで胸部を押せば出るようになる。いかも大量。味はハンクの様子を見る限り「飲めなくはなさそう」レベル。

そして極めつけの「喋る」。

ああもう科学の出る幕がない。これを人は「ゾンビ」と言うのかな?作中では「奇跡の力を持ったやつ!」と言われているがどうしてこんな利便性ちょい高めななゾンビになったのかは最後まで明かされていなかった。

だが本作品においてメニーの生態はそこまで言及する必要はないと思う。「伝えたいこと」を表す為の役としてはだいぶ強引な存在な気がしているが。

 

これ要するに「おならは恥ずかしくない!堂々としよう!」みたいなことを伝えたかったのだと僕は考えている。

 

ハンクは最後、死体に戻ってしまったメニーを生き返らせようと持ち去るのだが警察に捕まる。その際に堂々と屁をしたことで彼が恋していた女の子のサラや警察官たちに軽蔑される始末。だがメニーは復活し、彼を肯定するかのような微笑みを浮かばせながらおならで海を渡るのだ。

 

伝えたいメッセージがこれなのだからこの映画はかなりヘンテコだ。まあ死体をサーフボード代わりに使っているところでアタマのネジ結構外しているなと思うが僕としてははそのヘンテコさに理解度を付け足してほしかった。

描写が早いから観る側の理解が追い付かないのだ。だから間髪入れずに流れてくるシーンに困惑する。

終盤はもっと説明調でも良いかなと思った。とにかく理解できる時間が欲しかった。

 

だけどこの作品は結構笑う。発想がヘンテコだから至るところで笑える。ダニエル・ラドクリフを何だと思っている!といわせるくらい雑な扱いをするポール・ダノは必見である。

 

総評

発想が面白かったしコメディ要素は十分笑えたがちょっとテンポが速くて終盤の理解が追い付かなかった。

この作品のメッセージは「おならを恥じるな!」だがこの作品を観終わった今でもおならを人前でやることには抵抗がある。

やっぱりおなら=汚物というのが定着しているからね。現に汚物なんだけどね!臭いし音が気持ち悪いし。

だからこの映画はメッセージ云々ではなくヘンテコ映画として、ただただ笑ってもらえるのが一番幸せな見方だと思う。

 

そして本作品の制作会社はA24。『ミッドサマー』や『ライトハウス』など、「あ、もう2度は観なくてもいいな」と思わせる映画を作る制作会社である。

作る映画が悪趣味なんだよね。そして大体エグい下ネタぶち込んでくる。マスターベーションという単語はたいてい出てくる。

でもハイクオリティなんだよね。感覚的に説明するとA24の手掛ける映画は妙に整頓されているような、無駄のないような質感をしているのだ。

だからこれからのA24作品に期待しようと思う。

また僕に「うげえ」といわせる作風と「うおお」といわせるような演出を待つ!