午後のロードショーで『身代金』を観たからそのレビューをしようと思う。
リスクを伴う危険な取引など日常茶飯事の実業家トム・ミューレン(メル・ギブソン)。しかし9歳になる一人息子が誘拐され、FBIの救出作戦が失敗に終わったとき、彼は人生で最も危険な賭けに出る。
(Amazonより抜粋)
レビュー
かなり面白かった。描けることを全部描けている、よくできた映画であった。
身代金、というワードから予想できる通りこの作品は誘拐をメインにした話である。
メル・ギブソン演じる実業家のトムがある日目を離したすきに息子を誘拐され、そんなこんなで息子を取り返し、計画ミスって雲隠れしようとする犯人を取っ捕まえるというのが大体の流れ。
物語はトムが主人公なのだが誘拐犯側も序盤から描かれていたから割と俯瞰的な作品だと思った。
誘拐犯は私怨でやっている描写があったのだが忘れた。ここは弱いか、はたまた僕のリスニングミスなのかはわからない。
でも僕はそこに関しては割とどうでもよいと思ってる。私怨であろうとも、大金であろうとも。
まずね、警察官が誘拐の主犯っていうのが面白い。ここが最初の面白ポイント。
『セルラー』とここは似ているんだよな。実は警察が黒幕っていう。展開はこっちの方が早めだったから製作側はこれを真の面白さとはみていない。
そんな警察官がトムと電話を通して心理戦を行っていくのだが、トムは警察官にこう尋ねる。
「どうして俺を狙ったんだ」
これに対して警察官は
「あんたはトラブルを金で片付ける男だろ。そういうやつならやってくれる。必ず払ってくれる。」
トムのステータスには賄賂がある。冒頭のホームパーティー中に記者に凸られているところからそれはうかがえる。どうやら自身が裏金を渡した人間が捕まり、刑務所にいるらしい。
トラブルを金で片付ける人間なら今回の誘拐も金で片付けてくれる。
犯人が狙うにはもってこいの動機だね。ここの論理が個人的に整っていてよかった。
そしてこの作品は後半でスタイルが真逆になる。
身代金が懸賞金になるのだ。
最初からやれよ!とは思うのだがまぁそこまでのキレ者だったら面白くないよねということで。
予想もしなかった行動に主犯格の警察官大ピンチ。
「追い詰められる者」が「追い詰める者」になり「追い詰める者」が「追い詰められる者」へと変わるこの展開がかなり良かったね。
誘拐犯たちは「息子マジで殺すぞーー?!」と脅しのレベルをあげるものの、結局一線は越えられず。トムの妻を呼び出し、「懸賞金をとりやめて身代金を払え。じゃなきゃお前を殺すぞ!」と言うが結局トムの意向は変わらず皆で逃げることにするのだが追い詰められた警察官は警察官として誘拐犯をしめあげ、自分が息子を救ったということにする。
そしてここから。警察官は高飛びするために懸賞金を手に入れる必要がある。だから予定前倒しでトムのところにくる。息子の命の恩人ということで歓迎する。
ここの会話が好きでさ。
警察官「なぜ身代金を払わなかったんですか?」
トム「あいつらは人間のクズだ。やつらが約束を守るはずがない。信用できるなら大金をあげるがあの犯人には、ダメです」
賄賂してたお前が言う?っていう。まずそれが込み上げてくる。警察官もなかなか顔を曇らせて返答してるっていうのがよかった。
息子は警察官を知っているからお漏らししてしまうのだがそれを信じて切手のサインをあえて間違えたのはよかった。まぁバレるんだけどここら辺の警察官とトムの視線のやりとりだったり会話の繋ぎがぎこちなくて緊迫感があったね。
結局送金することになり銀行で手続きしたが警察が警察官を任意同行しようと迫り射殺しトムともみあいになる。
結局警察官は隠していた銃をとろうとしたところをうたれ死ぬのだが真によいところはこの後。
トムも逮捕されるってとこね。
まさに勧善懲悪!どんなにパパ面していても賄賂をしているあたり罪の重さは違えど警察官と同等。
そこをしっかりと理解して描けていたので「はぇーーー」と感嘆したね。
別段犯人捕まえてわっしょい!で終わると思いきや、やっぱり良き父親像として終わらせないのが素晴らしかった。
そういった点では凄く人道的な映画なのかな。罪の重さ違えど悪人は等しく罰せられる。
それを再認識させられる映画であった。
総評
満足のいく映画であった。「身代金」というタイトルの反転、そして真犯人との掛け合い・会話。それらが洗練されていて見応えがあった。
ここ最近「面白い」というのがよくわからなくなっているのが本音で。
どういう観点で判断すればよいのか見失っていたのだがこの作品はかなり面白かったと断言できる。
不朽の名作だねこれ。
今何かこれと似たような設定のドラマやってるよね。日曜劇場の。
『マイ・ファミリー』だっけ?1話見忘れたからTVerで見よ……。