Amazonプライムビデオで『オッドタクシー』をみたからそのレビューをしようと思う。
あらすじ
平凡な毎日を送るタクシー運転手・小戸川。身寄りはなく、他人とあまり関わらない、少し偏屈で無口な変わり者。趣味は寝る前に聞く落語と仕事中に聞くラジオ。一応、友人と呼べるのはかかりつけでもある医者の剛力と、高校からの同級生、柿花ぐらい。彼が運ぶのは、どこかクセのある客ばかり。バズりたくてしょうがない大学生・樺沢、何かを隠す看護師・白川、いまいち売れない芸人コンビ・ホモサピエンス、街のゴロツキ・ドブ、売出し中のアイドル・ミステリーキッス…何でも無いはずの人々の会話は、やがて失踪した1人の少女へと繋がっていく。
(Amazonより抜粋)
レビュー
面白かった。キャラクター性、ストーリー性ともに抜群によかった。
本作品はあんなルックスしておいて結構ブラックな話である。練馬で女子高生が行方不明になった!女子高生が死ぬ間際にタクシーに乗っていた!そのタクシーのドラレコをみんなこぞって取ろうとする話?でも副次的な話が結構多かったから終盤までは全然そんな話ではなかった。
主人公は小戸川(下の名前忘れた)。個人タクシーをやっているのだが記憶力がよく、大勢の人間から対象を見つけ出す能力をもっている。
こういう言い方すると超能力くさいがこれ、結構ぶっとい伏線だったんだね。
視界がみんな動物なら、顔面みんな個性的だからね。見終わった今思うと…ね。ここは若者言葉で言うと「ジワる」って感じ。
でも誰も動物面の世界観になんとも思わないよな。そこ疑おうともしないもん。
僕は当初の予定だとこの部分は、
動物面とはいえ、動物面ならではのシーンがない。何なら動物面しているくせに動物図鑑や猫愛でている。だから人間が行うことで成立するサスペンスを動物面でファンシーに描くことでドラマではなく、アニメの枠に収めている。ターゲット層を増やす意味でもここはなかなか上手いなと思った。
みたいなことを書こうとしていたわけね。
でも視覚による認知障害であることを知ったあたりから「ん?」とは思ってたんよ。ビビビ!ってね!母といっしょに『相棒』をみていたあの頃の自分が降りてきたわけよ!
でも降りるのが遅かった!
ここは一本とらされた。意識の外すぎるんだよなートリックが。ただただ脱帽。
そして細部にまで目を凝らしてみないといけない点でもかなり面白かった。
まぁ小戸川を軸に展開されていくストーリーではあるんだけどじゃあ小戸川を狙っているやつだったり小戸川と親しくしているやつが「どうして小戸川なのか」というところをちゃんと描いているんだよね。
ここの軸もぶっとくてよかったし、他のキャラクターの生きざまみたいのが骨太に描写されているのが凄くよかった。
僕はミステリーキッスのマッチングアプリ使いの女の子が好き。
家が貧しく、自分の部屋がない。だから一人になれる風呂場だけが自分の部屋だった。
それを度々会話に絡ませているのが良くてさ。
あ、こいつめっちゃ信念太いじゃん。と好きになっちゃったよね。
あと田中だっけ?ゲーム会社の男の子。あいつも好きでさー
あいつに限っては回想でとっていた時間がばちくそ長かったし、幼少期から現在までの長い期間での回想というのもあって結構重厚に描かれていたんだよね。
それにその前の回でモブ役同然に車に轢かれそうになっていたところに話が帰着するっていうのも消化しやすくてとても良かった。
ネタ的に面白かったのは矢野ね。
キックスケーター乗り回す暴力団幹部とかどういう設定かよと思ってたのだが、いざ喋らせるともっと「どういう設定だよ」と思っちゃう、そういうやつ。
会話が韻踏んでるけど、音ハメとか現実ではない訳でしょ?ってのを考えるとなかなか凄いと思うよ。
「ジュラルミン まだ中身は未確認」とか気持ち良すぎる韻をかまされたときは素で「おっほほ」と笑っちゃったよね。
そこのラップ台詞が面白かった。終盤、追い込まれて韻踏めなくなったとき、「矢野さん!韻、踏んでないですよ!」と部下に言われるのマジで笑った。
今かけるべき台詞ではないだろという。
あとはラストの畳み掛けだよね。幸せな気持ちで終わらせないのが最高。
胸糞悪い最後って色々想像しちゃうんだよね。「え、どうなったの?!どうなっちゃったの?!」っていう。その余韻に浸るのが楽しくてね。それが「面白い」にまで発展するんだよね。
まさかメルティーキッスの代打が…ね。かなりビックリした。
でも言われてみれば「どんなやり方使っても夢叶えるんやで?」みたいなことを母に言われていたんだよね。それは「メルティーキッスの身代わりになることも厭わない!」みたいな純真な覚悟だなと受け取ってたんだけど。
まさかホントに手段を選んでなかったとは…そしてラストね。
寝ていた小戸川のタクシーにメルティーキッス代打の女の子が現れる。
代打の女の子はドラレコを持つ小戸川を殺そうとしているんだけどなにも知らない小戸川は「どちらまで?」と言う。
ここのタイトル伏線回収もいいんだけどこの緊迫感が絶妙によかった。
認知障害が治った今なら間違いなく死ぬな、あれ。というかそうじゃなくても死んでいたか。
この手のサスペンスはあまりアニメではないからどうなるかと思ったんだけど意外に先が読めない。
ドラマのサスペンスとどう違うのかと考えたときに、「演者の顔が見えない」と気付いた。
僕はサスペンスドラマはまあまあ見てきたと思うのだが、やっぱり見ていると演者の顔で「あ、あいつが犯人ね」と大体わかる。
犯人の演技にはあらかたの技量が求められるから無名の俳優には頼めないんだろうね……。
全員名俳優のサスペンスものとかもある。『マスカレード・ホテル』とかね。でもあれって映画だからこそできるんだよね。ドラマ1話1話でやってられるか!という。
だからこれは切っても切れない問題なのである。
でもアニメは違う。演者は声優。顔ではなく、声で勝負する演者。(最近は顔も求められて度々ドラマにでてる声優もいるのだがそれは置いといて)
声に技量とか格の違いはやっぱりある。本作品だって芸人起用しているからね。
でもそんなことはどうでもよくて。結局キャラクターをみて判断せざるを得なくなるんだよね。そこがとてもよかった。
本作品みたいなサスペンスのアニメはもっと欲しいね。
悪いところはねー小戸川の声かな。
慣れようにも慣れない。もうちょい声太くてもよくないか?とも思った。
次回予告映像のときに、本編とは関係ない会話をキャラクター同士でみせるのだが小戸川がちょっと声を張り上げるシーンがあった。
そこの声がもうね…すみじろう。
声だけだったが、あのときの小戸川の顔はみなくてもわかる…花札の耳飾りしている少年の顔だと思うな。
もうちょい中年ならではの声を…と思った。津田健次郎さんとかは何か違うからなー誰が適任なんだろね。
でも花江夏樹にはまだ中年役は早いなと思った。
総評
いやはや面白かった。序盤は微妙だったが、中盤から終盤にかけての追い込みが抜群によかった。
小戸川宅の押し入れに入ってた何かが猫ってオチなのもなかなかよかった。認知障害だからこそもっとおぞましいものに見えたのかな。
最初女子高生かと思ってたからな…
というかこの作品、予想をめっちゃ裏切っていくからなかなか面白かった。
記憶消してみたいアニメですね。みんながこれに休日吸われるのも納得がいくね。
だからみんな!
GWはオッドタクシーを見よう!
以上!