今更ながら『劇場版 呪術廻戦0』を見た。
あらすじ
幼少のころ、幼なじみの折本里香を交通事故により目の前で失った乙骨憂太。
「約束だよ 里香と憂太は大人になったら結婚するの」
怨霊と化した里香の呪いに苦しみ、自身の死を望む乙骨だったが、最強の呪術師・五条悟によって、呪術高専に迎え入れられた。
そして、同級生の禪院真希・狗巻 棘・パンダと出会い、乙骨はある決意をする。
「生きてていいって自信が欲しいんだ」
「僕は呪術高専で里香ちゃんの呪いを解きます」
一方乙骨たちの前にかつて一般人を大量虐殺し高専を追放された最悪の呪詛師・夏油 傑が現れる。
「来たる12月24日 我々は百鬼夜行を行う」
呪術師だけの楽園を標榜する夏油は、非術師を殲滅させんと、ついに新宿・京都に千の呪いを放ち──
果たして、乙骨は夏油を止められるのか、
そして、里香の解呪の行方は…。
レビュー
面白かった。前日譚としての役割を果たしながらファンのニーズに合った映画であった。一方で後半の内容が詰まっていないなと思う映画でもあった。
本作品はアニメの1年前の話である。2017年12月24日に呪術師が命を削りあってたんだぞ~という話である。
2017年12月25日って何やってたんだろ…鼻ほじりながらCDTVクリスマス特番見てたんじゃないかな。
なんかこうしている間に呪術師が血反吐はきながら異形と対峙していると思うと感慨深いがこの一年後にアニメの主人公、虎杖悠仁が高専に来るらしい。
虎杖はアニメの終盤に先輩方が学校長に1級術師に推薦していたが今回の主人公の乙骨君は最初から特級呪術師。虎杖もなかにいるのは呪術全盛期の平安時代で最凶とよばれてた馬鹿強い呪霊だから特級でもいいんじゃないか?と見終えた今、思うのだがそれは置いといて。
今回、結構ファンのニーズに応えた作品だなと思っているのはキャラクターの深堀りがしっかりされていて、新たな一面を引き出せているからだと思う。
狗巻とかね。普段、おにぎりの具しか喋らないから普通にアニメ見ていると彼が何を考えているかわからない。だからまさか乙骨のことを気にかけているなんて思わない。それを本作を通して意志を見る側にわからせていたのがよかった。
禪院に関しても同じことが言える。彼女は弱さがしっかりと引き出されていたと思う。アニメだと姉として、先輩として、というのが前に出ていて彼女の「強い女性像」っていうのがよく出されていた。
だけど今回は真逆。呪力がないながらもがく彼女の姿がアニメとギャップがあってよかった。
そんな狗巻の内面、禪院の弱さを引き出していたのが乙骨憂太。彼が二人と任務を共にするうちに二人の人柄に触れ、成長していくこの構図が重厚に描かれていたのがとてもよかった。
ニーズに応えたのはそれだけではない。
夏油傑ね。ビーチで悠々自適に黒幕してた彼が人間社会でどういうことをしているのかよくわからなかった。
それを本作品は補っているのだ。裏では「呪術師のみの世界にする」という理想のもと呪いを放ちまくっているが表では宗教団体の長として人に取り憑いた呪いを払ったり、逆に貢いでくれる富裕層を頃合い見て呪殺していたり…これまで謎ばかりの彼の人物像が描けていた。
あと戦闘シーンね。ストーリーとしてはまだまだ前半だと思うのだが敵側のリーダーともよべる奴を真面目に闘わせるのはかなり大胆なことしているなと思った。
正直この作品でも夏油は戦闘しないんじゃないかと見込んでいたから呪具とか使ってガチ戦闘しているのは驚いた。それもごっつダメージ受けているし。
だから今回呪術廻戦のなかで夏油を推している人はかなり幸せだったんじゃないかな。
あと演出。素晴らしい。
本作品の数ある演出の中で特に好きなのは「画面を暗くして記録を綴る演出」である。
たとえば終盤、理香が顕現するシーン。
記録――2017年12月24日
特級過呪怨霊 折本里香
二度目の完全顕現
みたいなね。
本作品は前日譚なのだが、だからこそああいった記録的な演出は「この出来事は過去の出来事なんだな」と改めて思わせてくれる演出で凄くよかった。
あと乙骨が真希たちに挨拶するシーン。
歩くだけで呪力ムンムンの乙骨は勿論、その圧倒的な呪力に警戒する真希たちもよかった。
乙骨feat.理香っていうのがいかに術師たちにとってヤバい存在であるかを表すためにもあのシーンはかなり機能していたと思う。
アクションに関してもいわずもがな。
乙骨のアクション、特に真希との手合わせ。
乙骨の剣術が何というか、竹刀に頼りすぎている…みたいな姿勢で乙骨の人間性を出しているのかなと思った。
あと乙骨の竹刀が脇腹にあたりそうになったときの真希の大開脚の避け。
あれは凄かった。跳躍か、もしくはあたるものかと思ってたからあそこでの開脚座りでのかわしは見事だった。
ただ、後半の百鬼夜行。あそこがかなり残念だなと思った。
何故夏油の仲間の呪術師の戦闘シーンを出さないのだろう。尺なのかな。
僕としてはあのギャルとおとなしめのJKコンビの戦闘が見たかった。
伊地知さんとの会話はよかったんだけどね。もう一越えしてほしかった。
メンツがかなり個性的だったんだけどそのうちまともに闘ったのミゲルだけってのがかなりやるせなかった。じゃあミゲル以外呼ぶなよ!っていう。
名もなき呪術師たちが闘うシーンが少しあるのだが、そこをやりながら対比で術式使いながら呪術師を倒していく夏油陣営の活躍があってもよかったんじゃないのかというのが後半の感想である。
あとbgm。「Your Battle is My Battle」を作中でだしてほしかった。
アニメ見た人なら聴けばわかるサウンド。伏黒が領域展開したときに流れたかな。
あれが乙骨と夏油とかで流れてくれれば結構高揚しながら見れたかもしれない。
あと、度々入ってくる乙骨の心情描写(心の声)が聞き取れなかった。カッスカスだったからな…せっかくのツッコミが聞き取れなかったのでここはちょっと残念。
何なら作品を見終わった今、乙骨の声優が緒方恵美であることがどうにも腑に落ちない。
ところどころ声が掠れて聞き取れないし、幼少期がやけに甲高い声しているから見ていてムカムカしていた。
でもキャスティングした理由もなんとなくわかる。悲壮感あふれる声しているし、彼女の担当した代表的なキャラ、碇シンジと性格、雰囲気が似ているところから彼女が適任なんだとは思うがたまに聞き取れないときがあるから僕はこの作品の緒方恵美のキャスティングにはいただけないなというのが感想である。
じゃあ誰がよかったか。梶裕貴とか山下大輝が適任じゃないかなと僕は思う。
声質的に緒方恵美ほど弱々しい声は出せないが聞き取れる。叫びも慣れているからキャスティングしても違和感はないと思う。
そして里香との思い出ね。幸せなシーンで申し訳ないがあんなに幼い時から指輪プレゼントするのは凄いな。これはある程度成長したからこそ抱く感想だが小さい頃は純真無垢だからそんなこと思わないのかな。
いやでも11歳だからそろそろ抱くんじゃないのか?11歳の僕なら西野カナの「トリセツ」を聴いても重いと思うのかもしれない。結婚がどういうものなのか、結構わかってくる年齢だと思うし。
特級呪霊である里香の顕現について呪術師界の幹部たちに問い詰められる五条悟の図、エヴァンゲリオンでゼーレと話しているゲンドウみたいな構図していたな。一人を組織の幹部たちが囲んで色々いう…みたいなね。ここはエヴァンゲリオンからインスピレーションを受けたのかな。まあ興奮するんだから良いんだけどやっぱり呪術師界は五条悟の実力を甘く見ているのかなと思った。
そもそも五条悟がちゃんと見てたから!みたいなね。
まあでも、五条悟が眼に包帯を巻く工程が描かれていたからOKです。
なんならあの会議シーンは五条悟が包帯を巻くのを見せたいが為のシーンだと思ってるけど。
総評
素晴らしかった。アニメでは先輩故に強キャラになってしまっている真希&狗巻&パンダの弱い一面、しっかりと敵として役目を果たしていた夏油の知られざる一面を映してくれたから見応えがあった。
アニメの続編はまだ未定なのかな。エンドクレジットで乙骨が呼ばれていたから出てくるとは思うが今後の作品の展開が楽しみである。
ちなみに僕が好きなキャラクターは東堂ね。
不義遊戯、最高。